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3.0
シプレ・ド・クリマン 2016(Cyprès de Climens 2016) ―――――――――――――――――――――――――――――― ■生産者/ブランド名 シャトー・クリマン(Château Climens) 1547年の文献に名が見える歴史的領地。1971年にルルトン家が取得し、1992年からベレニス・ルルトンが当主に。哲学は「テロワールの純粋性をボトルに写す」。2010年に全区画をビオディナミへ転換し、2014年デメター認証取得。2022年にモワトリ家(Patrimonia)が大株主として参画。セカンドワインがこの「Cyprès de Climens」。グラン・ヴァン同様セミヨン単一。 ■ワイナリー所在地 フランス/ボルドー地方/グラーヴ地区/バーサック村(Barsac) 住所:Château Climens, 33720 Barsac 単一畑31〜32haをほぼ一枚所有。石灰質台地“オー・バーサック”上。 ■法定呼称・格付け AOC Barsac(ソーテルヌ地区内) ■ブドウ品種・アルコール度数 品種:セミヨン 100% アルコール度数:13.5% vol. ―――――――――――――――――――――――――――――― 【テイスティングノート(私見・ソムリエ視点)】 外観: 淡く明るいペールゴールド。グラスを傾けると細い脚がゆっくりと垂れ、粘性は豊か。澱や混濁は見当たらず、澄明度は高い。 香り: 一次香(果実・花)=黄桃、アプリコット、洋梨のコンポート、白い花弁(アカシア、カモミール)。 二次香(発酵・醸造由来)=オレンジピールの砂糖漬け、焼きリンゴ、蜂蜜、バニラのささやき。 三次香(熟成由来)=ヘーゼルナッツ、蜂蝋、ドライハーブ(ミントティー)、微かなサフラン。時間経過で石灰を想わせる粉っぽいミネラル感が顔を出す。 味わい: アタックは蜜のように甘美だが、舌先でべたつかない“張り”がある。酸は穏やかで丸みを帯びるが、ライムキャンディ的な爽やかさが背骨を形成。塩味のニュアンスが余韻に現れ、石灰質土壌由来のミネラルが甘味を引き締める。苦味は控えめで、タンニンはほぼ感じないレベル。アルコールは温かみを与えるが過度に主張せず、テクスチャはシルキーで滑らか。 構成要素: バランス=甘味と酸味、ミネラルが織り重なり均整。 複雑性=グラン・ヴァンほどの多層性には届かないが、果実と蜂蜜、ナッツが調和した上品な複雑さ。 余韻=中〜長め。蜂蜜と柑橘ピール、石灰粉の残香が静かに続く。 典型性=バーサックの石灰感とセミヨンの蜂蜜系アロマを素直に示す一方、ライトフットな質感で“気軽に楽しめる貴腐”という個性が際立つ。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【畑・テロワール詳細】 位置:北緯約44.56°/西経約0.32° 標高:約20m前後(石灰質台地の緩やかな高台) 傾斜・方位:ほぼ平坦〜緩斜面(1〜3%程度)、南〜南西向き区画が中心で日照を確保。 気候区分:海洋性気候(Atlantic/Maritime) ・ガロンヌ川と支流シロン川の影響で朝霧が発生し、日中の晴天で乾くことによりボトリティス・シネレア(貴腐)が形成されやすい。 ・累積積算温度(GDD・Base10℃):概ね1,600〜1,700℃日(長期平均値)。 土壌: ・化石を含む石灰岩母岩(クレタ紀) ・上層は赤みがかった粘土砂質に少量の礫 →保水と水はけのバランスが優れ、セミヨンに理想的な条件を提供。 農法: ・2010年より全区画ビオディナミ ・2014年デメター認証取得 ・化学肥料・除草剤不使用。区画ごとにカバークロップを実施。灌漑はなし。剪定はギヨー・シンプル。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【このワインの意外性と評価すべきポイント】 ・セカンドワインなのに100%セミヨン&単一畑由来という“純血主義”。一般的にブレンド比率が動く甘口の世界で、品種もテロワールもブレない。 ・Barsac特有の石灰質由来の“塩味と冷涼感”が甘味の中で際立つ。甘口=重厚濃密という先入観を裏切り、軽やかで清廉な後味を表現。 ・貴腐の恩恵を受けつつ、酸が突出しない年(2016)でもミネラルが骨格を補完し、だれない。これはクリマンの畑特性と厳しい選果の賜物。 ・価格帯が比較的抑えめで、“偉大なテロワールの片鱗”を体験できるコストパフォーマンスの良さ。投資向きというより、飲み手の感性に響く“知的満足型”の一本。 ・グラン・ヴァンに比べ熟成ポテンシャルは中庸(10〜15年程度)だが、その分、若いうちから香りの開放感と果実のピュアさを楽しめる飲み頃ウィンドウが長い。
りんのワイン日記
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シプレ・ド・クリマン 2016(Cyprès de Climens 2016) ―――――――――――――――――――――――――――――― ■生産者/ブランド名 シャトー・クリマン(Château Climens) 1547年の文献に名が見える歴史的領地。1971年にルルトン家が取得し、1992年からベレニス・ルルトンが当主に。哲学は「テロワールの純粋性をボトルに写す」。2010年に全区画をビオディナミへ転換し、2014年デメター認証取得。2022年にモワトリ家(Patrimonia)が大株主として参画。セカンドワインがこの「Cyprès de Climens」。グラン・ヴァン同様セミヨン単一。 ■ワイナリー所在地 フランス/ボルドー地方/グラーヴ地区/バーサック村(Barsac) 住所:Château Climens, 33720 Barsac 単一畑31〜32haをほぼ一枚所有。石灰質台地“オー・バーサック”上。 ■法定呼称・格付け AOC Barsac(ソーテルヌ地区内) ■ブドウ品種・アルコール度数 品種:セミヨン 100% アルコール度数:13.5% vol. ―――――――――――――――――――――――――――――― 【テイスティングノート(私見・ソムリエ視点)】 外観: 淡く明るいペールゴールド。グラスを傾けると細い脚がゆっくりと垂れ、粘性は豊か。澱や混濁は見当たらず、澄明度は高い。 香り: 一次香(果実・花)=黄桃、アプリコット、洋梨のコンポート、白い花弁(アカシア、カモミール)。 二次香(発酵・醸造由来)=オレンジピールの砂糖漬け、焼きリンゴ、蜂蜜、バニラのささやき。 三次香(熟成由来)=ヘーゼルナッツ、蜂蝋、ドライハーブ(ミントティー)、微かなサフラン。時間経過で石灰を想わせる粉っぽいミネラル感が顔を出す。 味わい: アタックは蜜のように甘美だが、舌先でべたつかない“張り”がある。酸は穏やかで丸みを帯びるが、ライムキャンディ的な爽やかさが背骨を形成。塩味のニュアンスが余韻に現れ、石灰質土壌由来のミネラルが甘味を引き締める。苦味は控えめで、タンニンはほぼ感じないレベル。アルコールは温かみを与えるが過度に主張せず、テクスチャはシルキーで滑らか。 構成要素: バランス=甘味と酸味、ミネラルが織り重なり均整。 複雑性=グラン・ヴァンほどの多層性には届かないが、果実と蜂蜜、ナッツが調和した上品な複雑さ。 余韻=中〜長め。蜂蜜と柑橘ピール、石灰粉の残香が静かに続く。 典型性=バーサックの石灰感とセミヨンの蜂蜜系アロマを素直に示す一方、ライトフットな質感で“気軽に楽しめる貴腐”という個性が際立つ。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【畑・テロワール詳細】 位置:北緯約44.56°/西経約0.32° 標高:約20m前後(石灰質台地の緩やかな高台) 傾斜・方位:ほぼ平坦〜緩斜面(1〜3%程度)、南〜南西向き区画が中心で日照を確保。 気候区分:海洋性気候(Atlantic/Maritime) ・ガロンヌ川と支流シロン川の影響で朝霧が発生し、日中の晴天で乾くことによりボトリティス・シネレア(貴腐)が形成されやすい。 ・累積積算温度(GDD・Base10℃):概ね1,600〜1,700℃日(長期平均値)。 土壌: ・化石を含む石灰岩母岩(クレタ紀) ・上層は赤みがかった粘土砂質に少量の礫 →保水と水はけのバランスが優れ、セミヨンに理想的な条件を提供。 農法: ・2010年より全区画ビオディナミ ・2014年デメター認証取得 ・化学肥料・除草剤不使用。区画ごとにカバークロップを実施。灌漑はなし。剪定はギヨー・シンプル。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【このワインの意外性と評価すべきポイント】 ・セカンドワインなのに100%セミヨン&単一畑由来という“純血主義”。一般的にブレンド比率が動く甘口の世界で、品種もテロワールもブレない。 ・Barsac特有の石灰質由来の“塩味と冷涼感”が甘味の中で際立つ。甘口=重厚濃密という先入観を裏切り、軽やかで清廉な後味を表現。 ・貴腐の恩恵を受けつつ、酸が突出しない年(2016)でもミネラルが骨格を補完し、だれない。これはクリマンの畑特性と厳しい選果の賜物。 ・価格帯が比較的抑えめで、“偉大なテロワールの片鱗”を体験できるコストパフォーマンスの良さ。投資向きというより、飲み手の感性に響く“知的満足型”の一本。 ・グラン・ヴァンに比べ熟成ポテンシャルは中庸(10〜15年程度)だが、その分、若いうちから香りの開放感と果実のピュアさを楽しめる飲み頃ウィンドウが長い。
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